野田村自然エネルギー学校 2015秋 レポート

囲炉裏を囲んでの懇親会。松茸の焼き上がりを待っています(笑)
囲炉裏を囲んでの懇親会。松茸の焼き上がりを待っています(笑)

 2013年6月に点灯式を行った「野田村だらすこ太陽光発電所」は、本日も発電を続けています。3.11の東日本大震災で大きな被害を受けた野田村の被災者が、自ら太陽光発電を設置して復興を図りたいと望み、企画された同発電所。PV-Netのサポートを受けながら、市民ファンドで約1900万円を日本全国より集めることで完成しました。市民ファンドは14年間で出資者に償還を行われるため、長きにわたって被災地とつながることを目指した復興支援プロジェクトとなっています。

 野田村だらすこ市民共同発電所では、運営の要として「自然エネルギー学校」を春と秋に年2回行っており、今秋も9月12、13日の2日間で開催されました。今回のテーマは3つ。(1)市民共同発電所を通じて地域の人々の力と協働を掘り起こすこと。(2)発電量の改善(向上)を行うこと。(3)被災から5年目を迎えた現地の状況の変化に向き合うこと。これらについて、参加者で答えを導き出し、その共有を行いました。

アジア民族造形館での講義風景
アジア民族造形館での講義風景

 野田村の地域を学ぶ講座は、東北特有の曲り屋(まがりや)が数多く集まる「アジア民族造形館」で行われました。冷涼な気候のため米が採れなかった野田村では、古くからたたら製鉄や鉄鍋を利用した塩づくりが盛んだったといいます。廣内洋治さんら地元の方からそうした野田村の歴史を聴くことで、改めて、だらすこ発電所が歴史のなかに連なる形として定着できることを感じました。

震災後に残った数本のクロマツとその向こうに望む巨大堤防
震災後に残った数本のクロマツとその向こうに望む巨大堤防

 整備が進む海岸に移動しての観察会では、復興の主力事業である高さ14メートルの巨大な堤防工事を見学しました。その一方で村では、今回の震災でそのほとんどが流されてしまったクロマツの防潮林(1933年の昭和三陸津波の教訓として植林された)を、もう一度、村の人たちの手で復活させようとしています。だらすこ発電所としても、単に発電事業を行うだけでなく、この植樹運動などと連携することで市民・地域による発電所としての意義も広がり、地域の復活にもつながっていくのではないでしょうか。

 2日目の主題は、参加者自らによる発電状況の把握と改善です。震災の混乱のなか、急を要するなかで建設されたという事情や、数十年ぶりの大雪に見舞われるという予想外の出来事によって、1年目の発電量は予測を下回りました(2年目は予測どおり)。こうした状況に対処しつつ、さらに現在の発電量をアップさせようと、今回の自然エネルギー学校では、方角や樹木の影、周りの地形の影響などの調査を行いました。その結果、1年目のような「例年にない雪」と「樹木の影」、この2つの対策を行うことが発電所の発電量(=売電収益)アップにつながるという結論に達しました。

かさ上げ作業を計画している下段部分の太陽光パネル
かさ上げ作業を計画している下段部分の太陽光パネル

 現状、最下段の太陽電池モジュールは地面すれすれに設置されています。大雪が降った場合、落ちた雪がなかなか溶けずに下段のパネルを覆ってしまうことが、発電量の低下をもたらしていました。そこで、もともとは雪を排出するために空けておいた空間に、最下段のパネルをかさ上げすることで、樹木の影改善と併せて、発電量の大きな改善となると考えています。

 ただし、これらの改善作業を一部の専門メンバーだけで行うことは、市民・地域の発電所としての趣旨とはやや離れたものになってしまいます。そこで、野田村だらすこ市民共同発電所に出資された方や、同発電所をきっかけに野田村やだらすこ工房を知った方にも改善作業にご参加いただく、体験型のワークショップを実施することになりました。自らが出資してできた発電所の改善を、だらすこメンバーと共に行うことで、より愛着と理解を深める機会となるはずです。ご興味のある方はぜひともご参加ください。

□■ だらすこ発電所 発電量改善ワークショップ ■□
日時: 10月11日(日)13:00 ~ 10月12日(月)12:00
場所: だらすこ工房(岩手県九戸郡野田村大字野田7-116)
内容: 発電量改善作業/希望により被災地見学、野田村観光名所めぐり
定員: 先着15名
参加費: 5,000円程度を予定(交通費・宿泊費・食費・懇親会費は実費)
申し込み・詳細お問い合わせ: info@greenenergy.jp までご連絡ください